2005年04月18日

宇宙へのメッセージ - アレシボ・メッセージ

Arecibo message
Credit: Frank Drake (UCSC) et al., Arecibo Observatory (Cornell, NAIC)

http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/ap050313.html
Astronomy Picture of the Day (NASA) より

上の絵はアレシボ・メッセージと呼ばれる、
1974年に球状星団M13に向けて送られた宇宙へのメッセージです。

メッセージは1679個の 0 と 1 の信号で構成されていました。
そのままでは意味不明なので、信号を再構成する必要があります。
信号の個数1679は、2つの素数 23と73を掛けた数字で、この信号を長方形に並べることで上の絵を復元出来るようになっています。(もちろん色はありませんが)
用いている言語、元素、基数(2進数とか10進数とか)すらわからない相手とのコミュニケーションには、普遍性を持った解読方法が必要になります。
アレシボ・メッセージでは、素数を用いました。知性を持った宇宙人ならば、1679は2つの素数の積であることを気づくはずだとプロジェクトに携わった科学者たちは考えたのです。


アレシボ・メッセージの中身の説明です。

----------------------------------------------------------------------
順に、「数」「生物の構成元素」「核酸」「DNAの2重らせん」「人間」「太陽系」「アレシボ天文台」を表しています。

・数
line1.png

2進数で右から順に1〜10までの数が書かれています。
白で色分けした部分は、マーカーとして数の始まりを表しています。
8〜10は2行にわたってしまうためにマーカーが必要になっています。

・生物の構成元素
line2.png

上の「数」と同様に数字が書いてあります。
左から、2進数→10進数にすると 15, 8, 7, 6, 1 となります。
これは、生物を構成するのに重要な元素を示しています。
左から順に、リン、酸素、窒素、炭素、水素の原子番号です。
この順番は次に示す、核酸の構造を表すのに用いられます。

・核酸の糖と塩基
line3.png

一つのブロックが一つの化学式を表しています。
左から順に、化学式に含まれている、リン(P)、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)の元素の数を示しています。
例えば、左上は、左から 0, 1, 0, 5, 7 なので、P0 O1 N 0 C5 H7 → C5H7O となり、デオキシリボースを示しています。
同様に変換すると、左上から、
一行目は、C5H7O, C5H5N2O2, C5H4N5, C5H7O は、デオキシリボース + チミン + アデニン + デオキシリボース
二行目は、PO4, PO4
三行目は、C5H7O, C5H4N5O, C4H4N3O, C5H7O
四行目は、PO4, PO4
となります。

C5H5N2O2 は、チミン
C5H4N5 は、アデニン
C5H4N5O は、グアニン
C4H4N3O は、シトシン
PO4 は、リン酸
を表しています。

つまり、

|        |
D - Thy = Ade - D
|        |
P        P
|        |
D - Gua ≡ Cyt - D
|        |
P        P
|        |

このようなDNAの基本的な構造が記してあります。(D: デオキシリボース、P: リン酸)

・DNAの2重らせん
line4.png

両端に二重らせんが書いてあります。
中央の白で書いてある部分は、
1111111111110111 1111101101011110 となります。
これは、10進数に直すと 4,294,441,822となります。
DNAのヌクレオチドの数を表しているそうですが、なぜか数が合いません(ヌクレオチドは約30億塩基対)。

・人間
line5.png

中央は人間の図です。
左は 11111 11111 01101 11011 111111 011111 で、
10進数に直すと、4,292,591,583となります。
これは、1974年当時の世界の人口を示しています。

右は、人間の身長を示していて、縦の棒が頭から足までの長さ、ということを表しています。
その中にある横に書かれた数字は、1110 と読め、10進数に直すと14になります。
ここで、長さの単位が何かというのが問題になりますが、
メッセージが送信された波長の2380MHz、つまり 300/2380 = 約12.6 cm が長さの単位として用いられています。
これを用いて計算すると、14×12.6 = 176.4 cmとなります。

・太陽系
line6.png

太陽系の模式図です。
一番右の大きな■が太陽。そこから左に水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星となっています。
地球は人間の真下で人間よりに位置し、人間が住んでいることを表しています。

・アレシボ天文台
line7.png
アレシボ天文台のアンテナの図です。
最下段の行は、左右の4つの白マスで、中に書かれた数字が望遠鏡の直径の距離を表していることを示しています。
中の数字は、100101 111110 で、10進数に直すと 2430。
先程の波長の単位を用いて、2430×12.6 = 30,618 cm = 約 306 mとなります。

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メッセージは以上です。
解読する宇宙人にもなかなか想像力が必要な気がします。

夢のある計画なのですが、M13星団は約2万4千光年以上の距離にあるので、運良く宇宙人が受信し、解読してすぐに返事を返しても残念ながら5万年は先のことになります。
posted by sushi at 01:58| Comment(1) | TrackBack(1) | 宇宙 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
2010年12月3日NASAが宇宙生命体探査における大発見ということで、米カリフォルニア州モノ湖でDNAを構成するりんのかわりにヒ素を使っているバクテリアを発見したとの事ですが、この研究の出発点はこのアレシボ返信(ここでは原子番号がリンのひとつ前のケイ素でした。)を踏まえたものではなかったか?と思いましたがいかがでしょうか。
Posted by kasuda.tosimitu at 2010年12月04日 00:24
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